2010 年 116 巻 5 号 p. 270-282
新潟県五泉市早出川周辺地域には,緑色岩類をブロックとして多数含む足尾帯ジュラ紀付加コンプレックスが分布する.本地域の緑色岩は変玄武岩からなり,記載岩石学的にPl,Pl+Ol,Pl+Ol+Cpx,Pl+Cpx,無斑晶質の5タイプに分けられる.10試料の全岩組成からは,変玄武岩はMORBではなく,海洋島玄武岩であると判別される.各岩石を(La/Yb)Nで比較すると,海洋島ソレアイト質玄武岩と海洋島アルカリ玄武岩の2つのグループに識別される.16試料中の単斜輝石組成からも,全岩組成と同様にTiO2含有量の違いなどからアルカリ岩とソレアイトに区分されるが,Mg#の高い部分では重複した組成を示す.クロムスピネルの組成もMORBよりは海洋島玄武岩中に存在するスピネルに類似した組成を示す.したがって本地域に分布する変玄武岩は,海洋プレート上の海洋島ソレアイト質玄武岩および海洋島アルカリ玄武岩が付加体中にブロックとして取り込まれたものであると考えられる.